死人花、幽霊花、捨て子花etc・・・なんとも不吉な別称、怖いイメージの付きまとう彼岸花ですが、私はとても好きな花です。
別称で有名なのは曼殊沙華ですね。これは天上の花という意味なんだそうですよ。
なぜこんなふうに不吉な別称がたくさんついたのか、お若い方や都会住まいの方にはよく分からないのではないかしら。
所説あるようですが、彼岸花というのは稲作と同時期に稲を守るために中国大陸から伝来したと言われています。
彼岸花には球根に強い毒性があるので、田んぼの畦(うね)に植えてモグラなどの害獣を近寄らせないのだそうな。
同じ理由でその昔、土葬のお骨を守るためにお墓に良く植えられていたのだそうです。
火葬が普及した今でも風習としてお墓に植えてあるので、彼岸花=お墓・死人・幽霊というイメージが定着したのかもしれませんね。
そして何よりもあの花姿です。
細く弱弱しい花弁だというのに力強く鮮烈な赤色の花は何とも不思議なアンバランスさと美しさが共存している気がするのですよ。
身の内に毒をもつ強さと強烈な美しさ、あっという間に散ってしまう儚さ。こういったイメージから彼岸花を自身に、彼岸花に近寄るネズミやモグラを男性になぞらえて、この花をあしらった着物を好んで着ていた花魁がいたという話を聞いたことがあります。
こちらは怖いというよりも胸が締め付けられるお話です。
確かにあまり楽しいイメージのある花ではありませんが、ちょうど今時期の彼岸の入りの頃に咲き始めて彼岸明けの頃に散る。暑さ寒さも彼岸までと言いますが、秋の訪れを知らせる花でもあるのです。
寒村の農家で生まれ育った店主にとっては、まだ暑いとは言え風が涼しくなるこの時期、黄金色に色付き始めた稲穂の横で田んぼの周りに自生の彼岸花が咲き始めると「あぁ、夏が終わったんだ」と一抹の寂しさを覚える花でもあります。
秋のお彼岸。墓参りで実家に向かう道すがら、視界一面に広がる黄金の海を眺めつつ毎年こんな事を思う訳です。
今年も秋がやってきますね。そしてあっという間に冬が来ます。型紙屋navyplusもようやく新作に取り掛かっています。11月に販売開始の予定なので、まずはコートを1着。今回のnavyplusのコートは、男臭さを取り入れつつも女性が着ると不思議と女性らしさが引き立つ。そんなイメージ。お楽しみに。
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